遺伝子の正体を暴いたハーシーとチェイスの実験|仕組みと歴史の真相

遺伝子の正体を暴いたハーシーとチェイスの実験|仕組みと歴史の真相

遺伝子の正体を暴いたハーシーとチェイスの実験|仕組みと歴史の真相にまつわる最新トピックを詳しく紐解きます。

ハーシーとチェイスが考案した実験系の最大の美しさは、元素の構成比に着目した精密なマーキング戦略と、極めて泥臭く独創的な分離手法にあります。

彼らは物質固有の構成元素の違いを利用しました。DNAにはリン(P)が豊富に含まれますが、硫黄(S)は一切含まれません。反対に、タンパク質にはメチオニンやシステインといったアミノ酸に硫黄(S)が含まれる一方、骨格にリンは含まれません。この決定的な違いを突くため、2種類の放射性同位体が投入されました。

  • 硫黄の放射性同位体(35S):半減期約87.4日。タンパク質外殻のみを特異的に標識。
  • リンの放射性同位体(32P):半減期約14.3日。内部のDNAのみを特異的に標識。

実験の具体的な手順は、大きく4つのステップに分かれます。

ステップ1:同位体によるファージの標識
それぞれ35Sを含む培地、32Pを含む培地で大腸菌を育て、そこにT2ファージを感染させることで、「殻が光る(標識された)ファージ」と「中身のDNAが光るファージ」を別個に調製しました。

ステップ2:大腸菌への感染
標識されたファージを、それぞれ通常の大腸菌へと感染させます。ファージは大腸菌の表面に取り付き、遺伝物質を注入し始めます。

ステップ3:家庭用ミキサー(ブレンダー)による物理的剪断
感染が成立した直後、混合液を家庭用ブレンダー(ワーリング・ブレンダー)に投入し、高速回転で激しく攪拌しました。この強い水流の摩擦力によって、大腸菌の外側に張り付いたままの「ファージの抜け殻」を力づくで振り落としたのです。

ステップ4:遠心分離による分離と放射能測定
攪拌した液体を遠心分離機にかけます。相対的に質量が重い「大腸菌」は試験管の底に集まって沈殿物(ペレット)を形成し、はるかに軽くて小さい「ファージの外殻」は液体部分である上澄み液(上清)にとどまります。

放射線測定器(ガイガー=ミュラー計数管)で測定した結果、驚くべきコントラストが浮き彫りになりました。35S(タンパク質)は上澄み液から約80%が検出され、沈殿した菌体内にはほとんど移行していませんでした。対照的に、32P(DNA)は沈殿物(大腸菌)側から大半が検出され、さらに大腸菌を破裂させて生じた子孫ファージの中にも32Pが受け継がれていたのです。この測定データにより、遺伝子の本体がDNAであるという揺るぎない確証がもたらされました。

松本 悠斗
著者

松本 悠斗

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。