「なべなべそこぬけ」の歌詞は、日本のわらべうたの中でも際立って簡潔です。一般的に歌われている標準的なフレーズは以下の通りです。
「なべなべ そこぬけ そこがぬけたら かえりましょ」
地方や伝承ルートによっては「そこがぬけたら どんどこしょ」「そこがぬけたら わたりましょ」と節回しや語尾が変化するケースも記録されています。しかし、核となる「なべなべ そこぬけ」というリフレインと反転動作は全国共通で受け継がれてきました。
音楽的な構造に目を向けると、この曲は日本の伝統的な「民謡音階(テトラコルド構造)」や、子どもの耳に馴染みやすいわらべうた特有のペンタトニックスケール(5音音階)で構成されています。音域は「レ・ミ・ソ・ラ」を中心としたわずか4〜5音程度の中に収まり、幼児が無理なく発声できる音域設計となっています。楽譜を開くと、素朴な4分の2拍子、あるいは4分の4拍子の規則正しいリズムで刻まれており、歩調や身体の揺れと完全に同期するよう作られているのが特徴です。
YouTubeなどで10万人以上の登録者を持つ教育チャンネル「うたスタ」などのリズム動画でも、子どもたちが直感的に手拍子を合わせられる教材として広く親しまれています。言葉の意味を深く考えずとも、メロディの抑揚に合わせて自然と体が動いてしまう構造こそ、この歌が口承文芸として数百年近く生き残ってきた最大の理由です。