装いを最適化する第一歩は、敵を知ること、すなわち気候の数値を正しく把握することです。気象庁の長期観測データによると、東京の10月下旬の天気は移動性高気圧に覆われて爽やかな秋晴れとなる日が多い反面、放射冷却によって朝晩の放射熱が奪われやすい特徴を持っています。平年の10月下旬の気温を見ると、日中の最高気温は19度〜21度前後まで上昇する一方で、朝晩の最低気温は10度〜12度前後まで一気に急降下します。
この「日較差(1日の最高気温と最低気温の差)」が約10度に達する環境こそが、服装選びを狂わせる元凶です。人間工学や温熱生理学の知見では、外気温が5度変化すると衣服1枚分の体感差が生じるとされています。つまり、10月下旬の一日は「薄手の長袖1枚で過ごせる快適な昼」から「ジャケットや裏地付きアウターが手放せない晩秋の夜」へと、短時間で季節が丸ごと移行するような急激な変化に晒されていることになります。
日中の暖かさだけに気を取られて最高気温20度の服装を基準に薄着で出歩けば夜間に体温を奪われ、逆に朝の寒さを恐れて最低気温10度のインナーとして分厚い発熱下着を着込んでしまうと、満員電車や商業施設の中で不快な汗をかき、その後の「汗冷え」を招く結果となります。このジレンマを打破するには、日中の快適性と夜間の防寒性を両立させる緻密なレイヤード構造の構築が欠かせません。