ネット上の掲示板やSNSでは、時折「高円宮久子さまは民間の一般サラリーマン家庭から皇室に入られた」という記述が見られます。しかし、これは近代日本の階層構造や財界の成り立ちを無視した極端な誤解です。
第一の誤解は、「商社勤務の会社員」という言葉の矮小化です。滋治郎氏が勤務していた当時の三井物産は、国家プロジェクト規模の貿易を一手に担う巨大企業であり、その海外現地法人トップ(フランス三井物産社長)や専務取締役という役職は、政財界の最上層に位置する要職でした。フランス大統領府や欧州各国の要人と日常的に渡り合うポストであり、いわゆる「一般家庭」という表現とは大きくかけ離れています。
第二の誤解は、妻・二三子氏の実家である友納家の背景が見落とされがちな点です。二三子氏の兄である友納武人氏は、厚生省(現・厚生労働省)の高級官僚を経て千葉県知事を3期務め、衆議院議員としても国政に影響力を持った大物政治家でした。鳥取家は単なる経済界の名門にとどまらず、高級官僚・政治家一族とも深い婚姻ネットワークを結んでいました。
さらに、久子さまが英国ケンブリッジ大学ガートン・カレッジへ留学された1970年代初頭は、女性が単身で海外の超一流大学へ留学すること自体が極めて限られた特権的環境でした。学費や滞在費といった経済的ハードルのみならず、現地での生活を支える国際的な信用保証がなければ実現困難な時代です。滋治郎氏が築き上げたヨーロッパにおける社会的信用と人脈が、娘の類まれなる学問的研鑽を後押しした事実は見逃せません。