昭和映画の歴史を振り返るとき、彼女が残した功績の凄まじさに改めて驚かされます。1930年代に溝口健二監督の傑作『浪華悲歌』で見せた圧倒的なリアルさと情念の演技は、日本映画界における主演女優の概念を根底から覆しました。その後、松竹や東宝といったメガスタジオの看板女優として数々の名作を牽引し、戦前・戦後の映画黄金期を最前線で支え続けたのです。
特に巨匠・黒澤明監督とのコラボレーションによって生まれた『蜘蛛巣城』での浅茅役は、シェイクスピアの『マクベス』をモチーフにした冷酷かつ壮絶な演技として、世界中の映画人から激賞されました。名実ともに日本映画界の頂点へと上り詰めた彼女の技術と存在感は、まさに邦画史に燦然と輝く財産と言えます。