登山者にとって「山梨から登るか、静岡から登るか」は極めて実利的な選択です。毎年20万人前後が訪れる富士登山において、主要4ルートのうち山梨県側にあるのが吉田ルート、静岡県側にあるのが富士宮ルート・須走ルート・御殿場ルートの3つです。
吉田ルートは、全登山者の約6割が集中する最大のメインストリートです。登山道と下山道が完全に分離されており、道中の山小屋や救護所が極めて充実しているため、初挑戦の登山者に向いています。一方、静岡側の富士宮ルートは5合目の標高が約2,400メートルと全ルート中最も高く、山頂までの物理的距離が短いのがメリットです。しかし、登りと下りが同一ルートであるため混雑時にすれ違いが発生しやすく、傾斜も急峻な岩場が続きます。
2026年の富士登山を計画する上で最大の変革が、「入山規制と通行料制度」の定着です。
かつて社会問題化していた夜間弾丸登山や軽装登山、山小屋前での野宿を根絶すべく、山梨県は5合目関門ゲートの運用と通行料徴収、1日あたりの入山者数上限(4,000人)の設定を厳格化しました。これに呼応する形で静岡県側も入山前登録や夜間通行ルールの統一を進め、現在では「宿泊予約のない夜間登山者は事実上通行不可」という枠組みが完全に確立されています。「思い立ったら夜通し登る」という旧来のスタイルは2026年現在では通用しないため、事前の公式システムでの予約と装備確認が義務となっています。