結婚と同時に発表された高井麻巳子氏の芸能界引退は、業界関係者にとっても大きな計算外でした。当時、彼女はソロ歌手としても女優としても将来を嘱望されており、事務所側としては結婚後も活動を継続させたい意向があったと伝えられています。
しかし、高井氏は未練を一切見せることなく、1988年をもって完全に表舞台から姿を消しました。記念コンサートや大々的な引退興行を打つこともなく、静かにマイクを置く道を選んだのです。この徹底した潔さは、当時のファンコミュニティに二重の打撃を与えました。
当時の雑誌読者欄や後年の回想録に残るファンの生の声を見ると、感情のグラデーションが浮き彫りになります。
「秋元に奪われたという悔しさは一生消えない。あんなにピュアだった麻巳子ちゃんが、なぜ一番俗っぽい大人の男を選んだのか」(当時20代・男性ファン)
「テレビで見られなくなるのは寂しいけれど、中途半端にタレント活動を続けずに家庭に入った姿を見て、彼女らしい芯の通し方だと納得せざるを得なかった」(当時10代・女性ファン)
未練がましく芸能界に片足を残さず、家庭を守るという一点に舵を切った彼女の態度は、当初の激しいバッシングを次第に沈静化させ、後年になって「伝説の清純派」としての神格化を決定づける要因となりました。