ネット上の掲示板やSNSでは、時折「500系は居住性が最悪だった失敗作」「走行性能に欠陥があったからクビになった」といった極端な言説が散見されます。しかし、当時の鉄道技術開発史や現場の記録を精査すると、そうした認識が大きな誤解であることが分かります。
確かに、空気抵抗を極限まで減らすために車体断面を航空機のような円筒形(丸型)に絞り込んだため、窓側席に座った乗客の肩口や頭上空間が窮屈になり、天井側の荷物棚が小さくて大型荷物が載せにくいという居住性の問題は指摘されていました。喫煙車両の煙が円形断面のせいで滞留しやすいといった当時のビジネス客からの不満も記録に残っています。
しかし、500系が残した技術的功績は鉄道史における金字塔です。車体下部まで覆う全周ホロ、カワセミのクチバシを模したバイオミミクリー(生物模倣)による先頭形状、フクロウの風切羽に学んだ翼型パンタグラフなど、今日のエコ車両開発の礎となった技術の多くが500系で実用化されました。山陽新幹線における航空機からのシェア奪還という本来の戦略目標においては、驚異的な移動時間短縮によって大勝利を収めています。
つまり、500系は決して技術的欠陥車ではなく、「山陽新幹線での超高速性能を極限まで追求した特化型マシン」であったがゆえに、「大量均質輸送を至上命題とする東海道新幹線」との思想的ミスマッチを起こしたというのが歴史の正確な実相です。