「少し身体を動かして汗をかけば初期の風邪は吹き飛ぶ」という言説を耳にすることがありますが、これは生理学的に明確な誤りです。風邪を引いている最中、体内では侵入したウイルスや細菌を排除するために免疫システムがフル稼働しており、膨大なエネルギーとタンパク質が免疫細胞(白血球やリンパ球など)へ優先的に供給されています。
この状態で高強度のウエイトトレーニングを実施すると、運動直後から数時間〜数日間にわたり一時的に免疫機能が著しく低下する「オープンウィンドウ現象」が生じます。トレーニングによって筋繊維が微細な損傷を受け、その修復のために生体リソースが奪われる結果、ウイルスに対する防御壁が崩壊し、初期症状だった風邪が一気に本格的な発熱や気管支炎へと悪化するケースが後を絶ちません。
さらにトレーニーにとって見過ごせないのが、コルチゾールの過剰分泌によるカタボリック(筋肉分解)の加速です。感染症による炎症ストレスとトレーニングの物理的ストレスが重複すると、ストレスホルモンであるコルチゾール値が跳ね上がります。コルチゾールは筋肉のタンパク質をアミノ酸へ分解してエネルギー源として利用しようとするため、良かれと思って行った筋トレが、皮肉にも自らの筋肉を削り落とす直接的な要因となってしまいます。