卓越した表現者はいつの時代も、複雑な生体を驚くほどシンプルな線へと落とし込んできた。不朽の名作『ピーナッツ』の作者チャールズ・M・シュルツが生み出したスヌーピーは、まさに記号化の極致と言える。シュルツは余計な毛並みを一切描かず、丸みを帯びた輪郭とわずかな点で、世界中から愛される犬の感情を表現しきった。
一方で、アニメーションの金字塔『101匹わんちゃん』を手掛けたウォルト・ディズニーのスタジオでは、生き生きとした骨格の躍動を徹底的にスケッチし、無駄を削ぎ落として流麗なキャラクターデザインへと昇華させた。両者に共通するのは、対象をリアルに写し取ることではなく、犬特有の愛くるしい仕草のエッセンスだけを抽出した点にある。手書きで描く私たちが目指すべきゴールも、まさにこの「引き算の美学」に他ならない。