「食べてすぐ寝ると太る」という言説に対し、インターネット上では「消費カロリーと摂取カロリーの収支さえ合っていれば、何時に食べていつ寝ても太らない(=嘘である)」という極端なカロリー至上主義の意見が散見されます。しかし、代謝内科や時間栄養学の専門研究が蓄積された現在、その見解は「カロリー収支という大前提は正しいが、代謝効率の観点からは明らかに太りやすくなる(=真実)」というのが医学界の一致した見解です。
生化学的に見て、食べてすぐ寝る行為が脂肪蓄積を促す理由は主に2つの生体内システムに起因しています。
第1の要因は、体内時計を制御するタンパク質「BMAL1(ビーマルワン)」の存在です。日本大学薬学部などの研究によって広く知られるようになったBMAL1は、脂肪細胞内で脂肪酸を取り込み、蓄積を促進する酵素を活性化させる働きを持っています。このBMAL1の分泌量は1日の中で大きく変動し、午後10時から深夜2時にかけて日中(特に午後3時頃)の約20倍から50倍のピークを迎えます。同じ300キロカロリーを摂取した場合でも、午後3時と深夜0時では、後者の方が中性脂肪として体内に取り込まれる割合が跳ね上がります。
第2の要因は、血糖値をコントロールするホルモン「インスリン」の働きと基礎代謝の急降下です。食事を摂ると血糖値が上昇し、膵臓からインスリンが分泌されてブドウ糖を筋肉や肝臓へエネルギーとして送り込みます。しかし、食後すぐに睡眠状態へ入ると、骨格筋の活動が完全にストップし、エネルギー消費が最小限に抑えられます。その結果、余ったブドウ糖はインスリンによって容赦なく脂肪細胞へと運ばれ、内臓脂肪や皮下脂肪へと変換されていきます。