なぜ私たちは、拒絶されるほどに執着してしまうのか。この謎を解明する学術的基盤が、心理的リアクタンス理論(行動心理学)だ。アメリカの心理学者ジャック・ブレームが提唱し、アメリカ心理学会でも長年にわたって検証が重ねられてきたこの理論は、極めて明快な人間心理のメカニズムを浮き彫りにしている。人間は自らの「選ぶ自由」が他者によって脅かされたと感じた瞬間、その自由を死守・回復しようと猛烈な反発エネルギーを生み出す。
「この赤いボタンは絶対に押すな」「関係者以外立ち入り禁止」。そう告げられた途端、それまで無関心だった対象の価値が跳ね上がったように錯覚する。自由の剥奪による精神的ストレスを解消するため、脳はその禁止事項を実行することでしか心の均衡を保てなくなるのだ。理性を軽々と飛び越えるこの防衛機制こそが、禁止を至高の誘惑へと変質させる黒幕である。