「回転寿司のえんがわは偽物の深海魚」「得体の知れない魚の肉が化けている」といったセンセーショナルな噂が、ネットやSNS上で定期的に拡散されます。結論から言えば、偽物でも危険な魚でもありません。ただし、高級寿司店で出されるヒラメとはまったく別の魚種が使われていることは動かしがたい事実です。
大衆的な回転寿司チェーンで提供されているえんがわの正体は、主に北海や北大西洋、オホーツク海の水深200〜1,000メートル以深に生息する「カラスガレイ(グリーンランド・ハリバット)」や、冷水域の巨大魚「オヒョウ(ハリバット)」です。
これら大型のカレイ類が採用される理由は、物理的なサイズとコスト構造にあります。高級魚である国産天然ヒラメは仕入れ値が極めて高く、1貫あたり数百円から1,000円を超える価格設定でなければ採算が取れません。対してカラスガレイは体長1メートル前後に成長し、オヒョウに至っては体長2メートル、体重100キログラムを超える個体も珍しくありません。巨体ゆえに1尾から取れるえんがわの総量がヒラメとは桁違いに多く、分厚く脂の乗った部位を大量かつ安価に確保できます。
消費者庁が定める食品表示基準およびJAS法に基づき、外食産業における魚種表記の適正化が進められてきました。かつては単に「えんがわ」とだけ書かれていたメニューも、今日ではアレルゲン情報や原産地情報と連動し、カレイ類を使用している旨が客観的に開示されています。「ヒラメの代用」として導入された歴史はあるものの、豊かな脂の乗りとリーズナブルな価格設定によって、カラスガレイのえんがわ自体が独立した人気ネタとしての地位を確立しています。