映画『ちはやふる -結び-』における佐野勇斗の役柄は、瑞沢高校かるた部に入部してくる新入生・筑波秋博(つくば あきひろ)です。筑波は北海道出身で、下の句かるたの経験者であり、全国大会優勝の経験もある実力者。しかし、一般的な競技かるた(上の句かるた)のルールには不慣れでありながら、自信過剰でプライドが高く、部内で孤立しかねない危うさを持ったキャラクターでした。
原作ファンにとって筑波秋博の最大の特徴といえば、かるたを取る瞬間に集中が高まるとペロッと舌を出す「舌出し(舌ペロ)」の癖です。漫画表現としてはキャッチーである一方、実写映像で生身の人間が演じると不自然になりかねない極めてハードルの高い記号でした。佐野勇斗はこの独特の所作を単なる誇張モノマネに終わらせず、「弟思いで強がっている少年が無心になる瞬間」の癖として徹底的に昇華させました。劇場公開時、試写会やSNS上では「原作の筑波そのもの」「ウザ可愛い絶妙なバランス」と大きな話題を呼びました。
物語のあらすじにおいても、筑波は単なるコミックリリーフにとどまりません。千早(広瀬すず)や太一(野村周平)、肉まんくんこと西田(矢本悠馬)、机くんこと駒野(森永悠希)といった先輩たちの真摯な姿勢と圧倒的な熱量に触れ、やがて独りよがりなプライドを捨てて「チームのために戦う瑞沢の一員」へと精神的成長を遂げていきます。その心の機微を、佐野は持ち前の豊かな表情変化と目の動きで見事に描き切りました。