「鱗片」という言葉は、被子植物の球根だけに留まりません。生物学の幅広い領域において重要な役割を担っています。
代表的な例が、蝶の鱗片と鱗粉です。アゲハチョウやモルフォチョウの翅(はね)の表面を顕微鏡で拡大すると、まるで瓦屋根のように規則正しく並んだ無数の微小な板状構造が確認できます。これこそが昆虫学上の鱗片(scale)です。この鱗片が翅から脱落して粉状に見えるものを一般に「鱗粉」と呼びます。蝶の鱗片には2つの大きな役割があり、特定波長の光を反射・干渉させて鮮やかな金属光沢を生み出す「構造色」の機能と、雨水を弾いて飛行性能を維持する「撥水機能」を併せ持っています。
さらに、大葉シダ植物(薄嚢シダ類やリュウビンタイ類)の根茎や羽葉の基部に見られる毛状突起も、植物学では「鱗片(ramentum)」あるいは鱗毛と呼ばれます。2列以上の細胞列からなる薄い膜状組織であり、過酷な環境下で未熟な新芽(ゼンマイのように巻いた芽)を乾燥や寒気、外敵の食害から物理的に保護する役割を果たしています。