APEC首脳会議の取材現場において、各国のジャーナリストが固唾をのんで見守るのは、全体会合の公式発言ではなく「首脳宣言(コミュニケ)の調整作業」と「米中首脳によるバイラテラル(二国間会談)」です。近年の首脳宣言をめぐる攻防は、まさに冷戦期を彷彿とさせる緊張感に包まれています。
過去、2018年のパプアニューギニア会合では、米国の保護主義批判と中国の不公正慣行批判が真っ向から衝突し、史上初めて首脳宣言の採択を断念する事態に追い込まれました。その後もロシアによるウクライナ侵攻や台湾海峡の安定をめぐり、「地政学的緊張が世界経済に及ぼす影響」という文言を挿入しようとする欧米諸国と、それに頑として反対するロシア・中国との間で、深夜に及ぶ壮絶なディプロマティック・バトルが繰り広げられてきました。
米中対立の真相は、単なる関税の掛け合いから「戦略物資の支配権争い」へと移行しています。米国は重要半導体やAI関連技術の対中禁輸措置を固め、「フレンド・ショアリング(同盟国・友好国間での供給網構築)」を推進。これに対し中国は、ガリウムやゲルマニウムといった重要鉱物の輸出管理強化をカードにチラつかせながら、APECの場を「米国の覇権主義を批判し、自らが多国間自由貿易の真の旗手である」とアピールするプロパガンダの舞台として戦略的に利用しています。