外交の世界において「シャトル外交(Shuttle Diplomacy)」には、歴史的定義と現代の実務的定義という2つの異なる側面が存在します。
本来の原義は、激しい軍事衝突や国交断絶によって「当事者同士が直接テーブルに着くことができない状態」において、第三国の仲介者が双方の首都や拠点をめまぐるしく往復し、妥協点を模索する調停活動を指します。紛争当事国Aと当事国Bの間に立ち、仲介者が糸を紡ぐように情報を媒介する手法です。
一方、現在の日韓関係などで使われるシャトル外交は、二国間のトップ同士が儀礼的な縛りを最小限にして「毎年、互いの国を定期的に往復訪問し、胸襟を開いて協議を行う枠組み」を意味する慣習用語として定着しました。この両者の根本にあるのは、英語の「shuttle」が意味する「定期往復便」、さらに遡れば機織り機で左右に往復しながら横糸を通す「杼(ひ)」の俊敏な動きです。
では、一般的に報じられる「公式首脳会談」や「国賓訪問」とは何が異なるのでしょうか。決定的な違いは、外交手続きの「儀礼の重さ」と「スピード感」にあります。
通常の公式訪問では、官僚組織が何ヶ月もかけて一言一句の共同宣言案を練り上げます。しかし、二国間のシャトル外交では「大きな合意文書が作れなくとも、会って直談判すること自体に価値がある」という現実主義が優先されるのです。