黒死牟が灰燼に帰した直後、第179話の後半で描かれたのは、肉体の苦痛から解放された無一郎の魂が向かった彼岸の世界でした。そこで待っていたのは、かつて鬼に襲われて命を落とした双子の兄・有一郎の姿でした。
再会した瞬間、有一郎は弟を抱きしめるのではなく、「こっちに来るな! 戻れ!」と激しく拒絶し、涙を流しながら無一郎を罵倒します。「お前が死んだら何の意味もない」「お前は何のために生まれたんだ」と、弟の早すぎる死を「無駄死に」と切り捨てて泣き叫ぶ兄の姿は、肉親としての痛切な愛そのものでした。
しかし、生前の記憶を取り戻し、精神的に大きく成長していた無一郎は、穏やかな笑みを浮かべて兄の言葉を静かに否定します。
「無駄死にじゃないよ」「仲間ができたんだ。僕は幸せだった瞬間が確かにあった。一度も幸せじゃなかったなんて言わないで」
「無一郎の無は、無限の無」――かつて有一郎が息を引き取る間際に遺したその言葉通り、無一郎は自らの無限の可能性を、誰かを守るための力として使い切りました。最後は有一郎も無一郎を強く抱きしめ、「ごめん、わかってるよ…だけど、お前には死なないでほしかったんだ」と本音を吐露。ふたりの魂が光の中で溶け合うように結ばれるこのシーンは、鬼滅の刃全編を通じても屈指の名場面として語り継がれています。