ハワイの精神文化を語る上で欠かせないのが、マナとロカヒの真意です。これらの言葉は近年、ヨガスタジオやオーガニックコスメのブランド名としても頻繁に採用されていますが、その背景には古代ハワイアンの世界観が克明に投影されています。
「マナ(Mana)」は一般に「超自然的な力」「奇跡のパワー」と訳されがちですが、実態はより日常的かつ倫理的なものです。マナとは宇宙、山、海、風、そして人間に宿る「神聖なエネルギー」や「徳・霊力」を指します。重要なのは、マナは生まれつきの量で固定されているのではなく、正しい行い(Pono)や他者への誠実な奉仕によって高まり、傲慢や不義によって容易に失われると考えられていた点です。権力者が威張り散らせばマナは散逸し、大地と調和して暮らす者にマナが満ちるという教えは、現代社会におけるリーダーシップや自己規律のあり方にも通底しています。
そして、そのマナを十全に循環させるための必須条件が「ロカヒ(Lōkahi)」です。Lōkahiは「調和」「統合」「一致」と訳されますが、具体的には以下の「聖なるトライアングル」の完全な均衡を指します。
1. Ke Akua(大いなる存在・天や大自然)との調和
2. Kānaka(人間・家族・社会)との調和
3. ‘Āina(大地・環境・物理的世界)との調和
人間関係だけが良好であっても、自然を破壊していればロカヒは崩壊します。内面が満たされていても、社会との摩擦を放置していれば真の調和は得られません。私たちがハワイ語のいい言葉に触れたときに感じる得も言われぬ安らぎは、この全方位的なバランスを重んじるロカヒの思想が、言葉の波動そのものに組み込まれているからに他なりません。