メジャーリーグの強打者たちが、なぜ36歳を過ぎた日本人投手のボールを捉えられなかったのか。現地メディアや打者の証言を検証すると、単なる制球力にとどまらない「球質の特殊性」が浮き彫りになります。
最大の武器は、ホップするような独特の球軌道を描くフォーシームでした。斎藤氏のストレートは球速こそ92〜95マイル(約148〜153km/h)前後でしたが、バックスピンの回転数が極めて多く、打者の手元で浮き上がる錯覚を与えました。メジャーの打者がボールの下を空振りするシーンが日常茶飯事となったのです。
さらに威力を発揮したのが、スライダーとカットボールの中間的な変化を見せる「スラッター」でした。打者の手元で鋭く真横へスライドしながら短く落ちるこの変化球は、左打者のバックドア、右打者のフロントドアとして抜群の威力を発揮しました。
現地中継のアナウンサーは、斎藤氏が登板するたびに「The Unhittable Takashi Saito(打撃不可能なタカシ・サイトウ)」と絶叫。2007年には、ファンおよび選手間投票により37歳にしてMLBオールスターゲームに選出されました。日本人選手としては歴代最年長での初選出という快挙であり、ドジャー・スタジアムのファンがスタンディングオベーションで称える姿は、日米の野球史に深く刻まれています。