ネット上の園芸掲示板や簡易まとめサイトにおいて、最も悪質かつ広範に信じ込まれているのが「早く収穫してしまっても、常温で置いておけば(追熟させれば)メロンは甘くなる」という言説です。断言しますが、これは植物生理学的に完全な間違いです。
バナナやキウイフルーツのように、収穫後に果実内のデンプンを糖へと分解して自ら甘味を増す果実(クリマクテリック型果実の一部機能)とは異なり、メロンは樹上で光合成によって作られたショ糖を果実へ送り込むことで甘くなります。果実にデンプンを蓄える能力が極めて低いため、つるから切り離された瞬間に糖度の上昇は完全にストップします。
つまり、プリンスメロン甘くならない原因の筆頭は、樹上で糖度が乗り切る前の「早採り」に他なりません。追熟によって変化するのは糖の量ではなく、果肉に含まれるペクチンが分解されて組織が柔らかくなり、香気成分が揮発して「甘く感じる食感と香り」に変化するだけなのです。
では、畑の上で最高の糖度を作り出すには何が必要なのか。最大の鍵を握るのは「水管理」です。
収穫の約10日前から7日前にかけて、水やりを段階的に減らして土壌を極度の乾燥状態に追い込むこと。これが糖度を上げるコツとしてプロの間で徹底されている技術です。水分供給を遮断することで果実の肥大を止め、余分な水分の流入を防いで糖分を限界まで濃縮させます。もし収穫直前に梅雨の長雨やゲリラ豪雨に晒されると、根から一気に水を吸い上げて糖度が2〜3度も暴落するばかりか、果皮が圧力に耐えきれずパックリと割れる「裂果」を引き起こします。プランター栽培なら雨の当たらない軒下へ移動させ、露地栽培なら雨除けビニールトンネルを掛ける配慮が生死を分けます。
さらに、葉の健康状態も直結します。収穫間際にうどんこ病やつる枯病で葉が枯死してしまうと、果実へ糖を送る工場が停止するため、絶対に甘くなりません。収穫の日を迎えるその瞬間まで、果実の周りの緑の葉を青々と保ち続けることが、糖度14度を超える濃厚な甘さへの絶対条件です。