インターネット上やSNSでは、「マダニをワセリンで厚く覆って窒息死させる」「アルコールやエタノールを垂らす」「ライターの火で炙る」といった民間療法が裏技として拡散されています。しかし、日本皮膚科学会をはじめとする専門医組織はこれらの行為に否定的な見解を示しています。
マダニは極めて強靭な呼吸代謝制御能力を持っており、ワセリンで覆っても数時間から半日以上窒息しないケースが多々あります。それどころか、窒息しかけたマダニが苦し紛れに唾液腺の内容物や消化管液を体内に大量に吐き戻す現象が確認されており、感染リスクを自ら引き上げる危険行為に他なりません。
熱や化学薬品による刺激も同様で、虫体が破壊されて病原体が皮下に漏れ出す原因となります。現場の医師が推奨する唯一の例外は、医療機関へ数日アクセスできない山岳遭難等の極限状況において、市販の「マダニ専用除去器具(ティックツイスター)」を正しく使用して回転離脱させる場合のみです。平地で医療機関にアクセスできる環境であれば、触らずそのまま病院へ直行するのが最善手です。