若手時代から定着した「イランのメッシ」という呼び名は、足元の吸い付くようなボールタッチと密集地帯をすり抜けるドリブルセンスに由来します。しかし、実像はその華奢なイメージとは大きく異なります。アズムンの真骨頂は、恵まれた体躯(186cm)をフルに活かした驚異的な空中戦の強さとポストプレーの精度にあります。
その跳躍力の原点は、サッカー界に入る前に打ち込んでいたバレーボールにあります。父親であるハリル・アズムン氏は元イラン代表の著名なバレーボール指導者であり、サルダル自身もU-15イラン代表に選出されるほどのアスリート能力を備えていました。滞空時間の長いヘディング、相手ディフェンダーを背負いながら胸トラップで収める空中姿勢の安定感は、他国のストライカーを圧倒する特異な武器となっています。
日本代表との対戦史を振り返ると、その脅威は極めて鮮明です。2019年アジアカップ準決勝では、日本が3-0で快勝したものの、判定への苛立ちからアズムンが柴崎岳への小競り合いを起こし、気迫と闘争心を剥き出しにする場面がありました。そして記憶に新しい2024年アジアカップ準々決勝。アズムンは板倉滉や冨安健洋といった欧州トップ基準のセンターバック陣を単独で引き裂きました。絶妙なスルーパスで同点弾をアシストし、自らもオフサイド判定で幻となったもののスーパーゴールを叩き込むなど、まさに一人で試合の力学を変形させてみせました。