サントリー美術館が誇るコレクションの厚みは、日本美術史を語る上で欠かせない一級品によって支えられています。サントリー美術館所蔵国宝一覧の筆頭に挙げられるのが、鎌倉時代の工芸技術の頂点を示す国宝《浮線綾螺鈿蒔絵手箱(ふせんりょうらでんまきえてばこ)》です。夜光貝の虹色の輝きと緻密な蒔絵が織りなす優美な意匠は、保存状態の素晴らしさも含めて奇跡的な工芸遺産として世界中から称賛を集めています。
この名品群を包み込むのが、建築家・隈研吾氏が設計を手がけた美術館建築です。「都市の居間」をコンセプトに掲げたサントリー美術館の隈研吾建築は、日本の伝統的な格子戸を連想させる無双格子(むそうごうし)や白磁ルーバーが外観を覆い、自然光を柔らかく透過させます。館内の床材には、サントリーの歴史を象徴するウイスキー樽の再生オーク材や、肌触りの優しい桐材が贅沢に用いられ、足元から伝わる温もりが来館者の緊張を解きほぐします。
展示室内のライティング設計も緻密を極めています。展示品本来の色彩や漆の艶、金箔の照りを極限まで美しく浮かび上がらせるため、最新鋭の調光LEDと特殊光学ガラスを採用。作品単体を孤立して見せるのではなく、空間そのものが作品と共鳴し、鑑賞者が歴史の時間軸へと誘われるような没入感を実現しています。