全国水平社の発祥の地に立つと、当時の息吹が今なお濃密に漂っていることを実感させられます。奈良県御所市柏原、西光万吉の生家である西光寺のすぐ隣に建てられたのが全国水平社 記念館です。
館内には、創立大会で掲げられたとされる血塗られた「荊冠旗」のレプリカや、西光万吉が書き遺した草稿、当時の弾圧を物語る検挙記録などの一次史料が体系的に展示されています。同館学芸員の証言や展示資料を検証すると、彼らが目指したのは単に「差別をなくしてくれ」という懇願ではなく、「差別に屈しない強い自己を確立すること」であったことが痛烈に伝わってきます。
一方で、全国水平社 現在の視点に立つと、新たな課題が浮き彫りになります。2016年に施行された「部落差別解消推進法」により法的な位置づけは明確化されたものの、2020年代以降はインターネット上の匿名掲示板やSNS、動画共有サイトにおける差別的な書き込みや地名リストの流出など、差別は「不可視化されたデジタル空間」へと形を変えて残存しています。水平社の先人たちが戦った偏見の構造は、メディア環境が変わった現代においても形を変えて問われ続けているのです。