ネット上の掲示板やSNSでは「田舎の広い土地さえ買えば、そのまま電車を置いて住居や倉庫にできる」といった安易な言説が見られますが、これは完全な誤解です。現実には、法規制と物理的環境の両面から極めて厳しい鉄道車両保管場所条件が課されます。
第1の盲点は建築基準法上の扱いです。単に車輪のついた状態でレールの上に一時留置されているだけであれば「車両」と見なされる余地がありますが、電気や水道などのライフラインを引き込んだり、階段やウッドデッキを常設して人が継続的に出入りしたりすると、行政(特定行政庁)から「建築物」と判定される可能性が跳ね上がります。建築物と認定された場合、建築確認申請が必要となり、耐火構造基準や基礎の定着性、シックハウス対策などをクリアしなければならず、既存の鉄道車両をそのまま適合させるのは極めて難度が高いのが実情です。無許可で設置した場合、是正勧告や撤去命令のリスクを背負うことになります。
第2の盲点は土地の地盤強度と固定資産税です。車両は台車部分の狭い接地面積に数十トンの荷重が集中するため、一般的な畑や山林の土の上に直接置けば、数か月で自重により不同沈下を起こして傾斜します。砂利を敷き詰めて突き固め、PC枕木やコンクリートスラブを施工する基礎工事は省略できません。また、土地自体の地目変更や、車体を固定物と見なされた場合の固定資産税課税についても自治体の資産税課と事前に協議しておく必要があります。