ウェブ上の文例集をそのままコピー&ペーストして手紙を作成する行為には、重大なコミュニケーション上の落とし穴が潜んでいます。
第一の盲点は、「相手の所在地による季節感の格差」を無視してしまう点です。東京のオフィスで執筆している書き手にとっては快適な秋晴れであっても、送付先である北海道ではすでに暖房を検討する寒さ(秋冷)に達していたり、九州や沖縄では依然として猛烈な台風や33度以上の残暑に見舞われていたりすることがあります。ビジネスにおける挨拶文は、自社がある場所の天気ではなく、「受け手が今立っている場所の情景」を想像して書くのがプロフェッショナルの鉄則です。
第二の誤解は、「時候の挨拶はどんな手紙にも必ず入れなければならない」という思い込みです。お悔やみの手紙(弔事)や、自社の不祥事に関するお詫び状、あるいは至急の確認を要する督促状においては、時候の挨拶を挿入することは厳禁とされています。季節を愛でる余裕を見せること自体が不謹慎・不敬にあたるため、これらは「前略」から入るか、時候を完全に省略して用件に直入するのが正式な儀礼です。