加賀恭一郎シリーズの深みは、事件そのものの謎解きだけでなく、作品群を縦断して描かれる「加賀を取り巻く人間模様」にあります。物語を楽しむ上で押さえておくべき主要人物の相関関係をまとめました。
まず加賀家における最大の軸となるのが、元警察官の父・加賀隆正と、家庭を捨てて失踪した母・百合子です。父に対して長年強い反発を抱いていた恭一郎ですが、『赤い指』で父の最期に対峙し、『祈りの幕が下りる時』で母の人生の軌跡を知ることで、自らの血筋と和解していきます。
また、警視庁捜査一課に所属する従弟の松宮脩平は、中盤以降の頼もしい相棒です。当初は風変わりな捜査を行う恭一郎に反発しながらも、次第にその鋭敏な洞察力に敬意を払い、やがて『希望の糸』では一人前の刑事へと成長を遂げます。さらに、大学時代の剣道部仲間や『眠りの森』で出会ったバレエダンサー・浅岡未緒など、彼が心を通わせた人々の記憶が、孤高の刑事である加賀の背中を静かに支えています。