黄泉戸喫とは?死者の国の掟と二度と現世へ戻れない戦慄の理由に迫る

黄泉戸喫とは?死者の国の掟と二度と現世へ戻れない戦慄の理由に迫る

黄泉戸喫とは?死者の国の掟と二度と現世へ戻れない戦慄の理由に迫るについて見逃せない 理由を分かりやすい構成で解説いたします。

この恐るべき掟が克明に描かれているのが、『古事記』上巻に記された国生みの神、イザナギ(伊邪那岐命)とイザナミ(伊邪那美命)の別れの場面です。

火の神カグツチを産んだ際の火傷で命を落とした妻・イザナミを諦めきれないイザナギは、彼女を連れ戻すために遥かなる黄泉の国へと赴きます。宮殿の扉越しに現世への帰還を懇願する夫に対し、イザナミは絶望的な一言を返しました。

「悔しいことです。あなたがもっと早く来てくださらなかったとは。私はすでに黄泉戸喫をしてしまいました」

イザナミ自身も現世へ戻りたい意思を持っていたものの、すでに黄泉の食物を口にしていたため、即座に帰る権利を失っていたのです。それでも夫への未練を断ち切れない彼女は、「黄泉の国の神々と交渉して現世に戻れるよう談判してみます。ただし、その間は決して私の姿を見ないでください」と約束を交わし、奥殿へと姿を消します。

しかし、待ちきれなくなったイザナギが自らの櫛の歯を折って火を灯し、禁を破って中を覗き込むと、そこには腐敗してウジが湧き、雷神たちに取り憑かれた変わり果てた妻の姿がありました。恥をかかされたと激怒したイザナミは、刺客である鬼女「黄泉醜女(よもつしこめ)」や八雷神、黄泉の軍勢を放ち、逃げるイザナギを生死の境界「黄泉比良坂(よもつひらさか)」まで凄まじい執念で追い詰めることになります。黄泉戸喫を契機に、かつて愛し合った夫婦神は「生と死を司る敵対者」へと永久に引き裂かれてしまいました。

中村 さくら
著者

中村 さくら

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。