「フランス語のリスニングテストかと思った」「字幕がないと完全に別言語」――テレビの街頭インタビューなどで青森の高齢者が話す津軽弁の翻訳テロップを見て、衝撃を受けた経験を持つ人は多いはずです。なぜ東北地方の方言は、ここまで標準語と異なる進化を遂げたのでしょうか。
東北方言の語源と歴史を紐解くと、実は平安時代から室町時代の京都の古語が色濃く残っていることが分かります。かつて都から伝わった言葉が、奥羽山脈などの険しい地形によって外部と遮断された結果、独自の保存と進化を遂げました。例えば、相手を気遣う表現や古い助動詞が、形を変えて今なお息づいています。
もう一つの決定的な要因が、いわゆるズーズー弁と呼ばれる独特の音韻体系です。「し」と「す」、「ち」と「つ」、「じ」と「ず」の区別が曖昧になる現象(母音の交替・中舌母音化)に加え、無声音が有声音に変化する「濁音化(カ行・タ行がガ行・ダ行に近くなる)」や、語頭以外の音が鼻音化する特徴があります。
厳しい冬の寒さの中、口を大きく開けずに最小限の顎の動きで効率よく発話しようとした生活の知恵が、独特の鼻濁音や短縮表現を生み出したという説も有力です。これにより、部外者には母音の聞き分けが困難になり、異国情緒すら漂う難解な響きへと仕上がりました。