2010年代半ば以降、食のトレンドを形作る主役はテレビや専門誌から動画配信プラットフォームへと移行した。その最大の立役者がNetflixの金字塔ドキュメンタリー『シェフのテーブル』である。エミー賞にもノミネートされた同シリーズは、シェフの人生観や哲学的苦悩、料理の裏にあるドキュメンタリーを圧倒的な映像美で描き出し、世界中のフードメディアのあり方を根本から塗り替えた。
同様に、HBOなどの高品質なドキュメンタリー番組や映像メディアも、単なる「美味しそうな料理紹介」にとどまらない、食の社会性や人間模様を深掘りする番組を次々と世に送り出している。ストリーミング時代の到来によって、視聴者は世界の辺境にあるレストランのストーリーや、伝統を守る無名の料理人の哲学に瞬時にアクセスできるようになった。これにより、「世界三大料理」という固定観念にとらわれない、多様でエモーショナルな食体験への欲求が世界中で爆発的に高まっている。