シブがき隊を語る際、常に付きまとってきたのが「メンバー同士の不仲説」です。活動後期には「楽屋でまったく会話を交わさない」「移動の車内でも空気が張り詰めていた」といった報道が過熱し、ワイドショーや芸能週刊誌の格好の標的となりました。この不仲説の真偽について、現在ではメンバー自身がテレビ番組のロングインタビューや自著などで極めて客観的に事実関係を明かしています。
結論から言えば、「末期において私生活の会話がほぼ途絶えていた」というのは紛れもない事実でした。しかし、それは子供じみた憎悪や仲間割れではなく、極めて特殊な労働環境と若年期の心理発達がもたらした必然的な現象でした。
中学・高校の多感な時期にTBS系ドラマ『2年B組仙八先生』のオーディションで出会い、合宿所で寝食を共にし、24時間365日プライベートのない共同生活を強いられた3人。TBSラジオの『シブがき隊 青春キャッチボール』『シブがき隊 マジジェネレーション』『シブがき隊のスーパーギャング』、さらには文化放送『ライオンリクエスト30・シブがき隊の俺たちマジだぜ!』といった過密なラジオレギュラーや全国ツアーをこなす中で、個人のパーソナルスペースは完全に摩耗していました。
心理学で言われる「自我同一性(アイデンティティ)の確立期」において、自分と他者の明確な「心理的バウンダリー(境界線)」を引くためには、意識的に距離を取るしか方法がなかったのです。仕事場ではプロとして完璧なフォーメーションとパフォーマンスを維持しながらも、カメラが止まれば言葉を交わさない――それは、壊れそうな精神の均衡を保つための防衛本能であり、ビジネスパートナーとしての高度な割り切りでもありました。
解隊から数十年を経た現在、3人は互いの連絡先を把握し、節目ごとに連絡を取り合うなど、成熟した大人としての信頼関係を取り戻しています。かつての「不仲」は、青春期の過酷な密室空間を生き抜くために必要な一時的冷却期間だったと総括できます。