JR各社が進めていたみどりの窓口廃止理由の根底にあったのは、深刻な少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少と、コロナ禍以降に定着した移動需要の変化でした。特にJR東日本は、管内約440駅にあった窓口を2026年までに約140駅へと一気に絞り込み、スマートフォン予約サービス「えきねっと」や多機能券売機への移行を急ピッチで進める経営改革を断行していました。
しかし、その急進的な合理化路線は2026年春に臨界点を迎えます。新年度を迎えた4月上旬、都心部や近郊ターミナル駅の窓口には連日長蛇の列が発生し、ピーク時には定期券購入待ち時間が120分から180分超に達する異常事態が常態化しました。窓口を閉鎖された近隣駅からの利用者が近隣の拠点駅へ集中し、残された窓口が完全にパンクしたのです。
この混乱を重く見たJR東日本は、2026年5月の定例記者会見において、就任直後の喜勢陽一社長自らが「みどりの窓口削減計画を一旦凍結し、配置を見直す」と表明しました。公式発表の場においてトップ自らが急速な削減による顧客サービスの低下を率直に認め、一律の数値目標を事実上白紙撤回したこの決定は、鉄道行政およびサービス産業全体に極めて大きな衝撃を与えました。