かつては海水浴客や熱心なサーファーが集う場として知られていた河原子海岸。その砂浜に隣接する敷地に温浴施設を根付かせたことは、温浴産業の視点からも極めて野心的な試みだった。塩害対策や強風への備えなど、沿岸部特有の過酷な環境維持コストを抱えながらも、それを余りあるブランド価値へと転換させた手腕は見事というほかない。
単に湯を提供する場所から、滞在そのものを旅の目的にする場所へ。地域の自然美を再解釈し、建築とランドスケープの力で現代のスパリゾートへと昇華させた。湯上がりに館内のリクライニングシートへ身を沈め、ガラス越しに荒波を見つめながらまどろむ人々の表情には、長旅の疲れなど微塵も感じられない。