日本人とグラミー賞の歴史を語る上で、決して避けて通れない原点が存在する。1989年、第31回グラミー賞において映画『ラストエンペラー』のサウンドトラックで最優秀オリジナル・映画音楽・アルバム賞を受賞した坂本龍一だ。
東洋の伝統楽器と西洋のオーケストレーション、そして先鋭的なシンセサイザーの融合。彼が生み出した重厚かつ繊細なサウンドスケープは、当時のハリウッドに鮮烈な衝撃を与えた。映画音楽という領域において、国境や人種を完全に超越した音響空間を構築できることを証明したこの瞬間こそが、後続の日本人音楽家たちにとっての決定的な灯火となったのである。