皇居の吹上御苑に隣接する宮中三殿(賢所・皇霊殿・神殿)は、一般には一切非公開の神聖な空間です。宮中三殿の祭祀の経緯は古代神話や律令祭祀に遡り、明治以降に現在の形へと整えられました。ここで執り行われる宮中祭祀の詳細まとめを見ると、その身体的・精神的な厳しさが浮き彫りになります。
代表的な祭儀の一つが、毎年1月1日の早朝、午前5時半から行われる四方拝です。厳冬の寒気の中、天皇陛下は黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)を召され、伊勢神宮をはじめ四方の神祇や歴代天皇の山陵を拝します。伝承される四方拝の祈りの内容には、国や民に降りかかる災厄があれば「我が身を通りて」民に及ぶことなかれ、という自己犠牲的な文言が含まれているとされ、究極の祈りの形を示しています。
さらに皇室最大の重儀とされるのが、11月23日に行われる新嘗祭です。天皇陛下は「夕の儀」「宵の儀」の二度にわたり、それぞれ約2時間、暖房のない神嘉殿(しんかでん)で正座を続け、その年に収穫された新穀を神々に供え、自らも共に召し上がります。寒冷な夜気に包まれながら長時間に及ぶこの儀式は、強靭な精神力と体力が求められる過酷な勤行です。