たぬきは基本的に無駄鳴きをしない動物ですが、繁殖期や縄張り争い、親子間のコミュニケーションにおいては非常に多様な音声を発します。日本各地の野生動物調査記録や保護施設の飼育データによると、たぬきの発声パターンは大きく4つに分類されます。
日常的によく耳にするのが、鼻にかかったような「キュー」「クゥー」という高音の鳴き声です。これは主に機嫌が良いときや、ペア同士・親子間で居場所を確かめ合う「コンタクトコール(呼び鳴き)」として機能します。子犬が甘えるような愛らしい響きを持つため、庭先から聞こえても野生動物の気配だと気づかない住民も少なくありません。
一方で、夜間に人間を驚かせるのが「ギャー」「グルルル」「シャキー」という激しい威嚇音や奇声です。天敵と遭遇した際やすれ違いざまの縄張り争い、あるいは外敵を追い払う局面では、喉を激しく震わせて金属的な金切り声を上げます。住宅地で「女の人の悲鳴のような声が聞こえた」と通報があり、警察や自治体が確認したところ、たぬき同士の威嚇合戦だったという事例は後を絶ちません。
また、春先の繁殖期に巣の中で生まれる赤ちゃんの鳴き声は、成獣とはまったく異なります。「ピッピッ」「ミィミィ」と小鳥のさえずりや生まれたての子猫に近い極めて微細な音を発するため、屋根裏で小鳥が巣を作ったと誤認されるケースが多発しています。成獣の「キュー」「ギャー」という特徴的な鳴き声とあわせて、どの成長フェーズの声かを把握することが、侵入実態を暴く第一歩となります。