東京の二大発祥地として知られる人形町と浅草。この二つの街は、それぞれ独自の個性を磨き上げてきた。
人形町に店を構える1907年創業の「板倉屋」は、七福神を模した精緻な造形で知られる。布袋尊や恵比寿などの福々しい顔立ちは、食べる者を思わず微笑ませる。卵とハチミツを贅沢に使ったカステラ生地は驚くほど薄く、中には滑らかなこし餡がぎっしりと詰まっている。口に含んだ瞬間に広がる上品な甘みは、まさに熟練の手焼きならではの極致だ。
対する浅草寺の仲見世通り、1868年創業の最古参「木村家本店」は、浅草のシンボルをモチーフに据える。五重塔、雷様、提灯、そして境内の鳩。しっかりとした厚みのあるカステラ生地は、香ばしさと力強い弾力が際立ち、職人が銅板で一気に焼き上げるからこその歯ざわりを生み出している。薄皮で餡を楽しむ人形町か、ふくよかな生地と餡の調和を味わう浅草か。この食べ比べこそ、東京巡りの醍醐味と言える。