テレビ中継で見ると柔らかい紐のように見えるさがりですが、十両以上の関取が身につける本番用のさがりは、板のようにピンと張った状態で固定されています。これには伝統的な製法と安全上の緻密な工夫が隠されています。
さがりの素材には絹糸が使われており、海藻から抽出した天然の糊である「ふのり(布海苔)」を煮詰めて何度も塗り重ねることで、乾燥させてカチカチに固めています。あえて硬く固める最大の理由は、「力士の指が引っかかる事故を防ぐため」です。
もしさがりが柔らかい紐のままだと、廻しの前立腹(前みつ)を引きつけようと手を伸ばした対戦相手の指が絡まり、突き指や骨折、腱断裂などの大怪我を引き起こす危険性があります。ふのりで棒状に固めておくことで、相手の指が触れても滑って逃げるようになり、強い圧力がかかると自ずと根元から抜けて落ちる構造になっているのです。