私たちが現在知っている桃太郎は、子供向けに刺激的な要素を削ぎ落とし、道徳教育用に再編されたバージョンです。江戸時代の文献や伝承を比較すると、数多くの「裏設定」や原作との相違点が存在します。
誕生の経緯について、江戸初期までの主流は桃を食べた老夫婦が若返って性交し、桃太郎を身ごもる「回春型」でした。桃は古来より中国道教や古事記(イザナギの神話)において邪気を祓い不老長寿をもたらす仙果とされており、生命力の再生を意味していたのです。しかし、1887年(明治20年)に文部省が編纂した尋常小学校の教科書に桃太郎が採用された際、「小学校教育の場に性的な連想は不適切である」という理由から、桃から直接赤ん坊が生まれる「果生型」に統一されました。
お供に犬・猿・雉が選ばれた理由にも、古代中国の陰陽五行思想に基づく深い意味があります。鬼の出入り口とされる不吉な方角「鬼門」は十二支で言う「丑寅(うしとら=北東)」です。鬼が牛の角を生やし、虎の皮のパンツを穿いているのはこれが理由です。この丑寅に対抗するため、風水的に正反対の方角(南西〜西)に位置する「申(猿)・酉(雉)・戌(犬)」が討伐隊に抜擢されたと読み解かれています。