本堂の奥深く、薄暗がりの中に安置された本尊。それが国宝 薬師如来立像だ。一木造りの重厚な躯体、力強く刻まれた衣の皺、そしてどこか険しくもある厳格な面容。見る者を威圧するかのようなその異彩を放つ立ち姿は、平安初期の仏教彫刻における最高傑作の一つと称される。
空海がこの寺を拠点としていた約14年間、彼は密教の神髄を広めるべく精力的に活動した。灌頂の儀式を行い、当時の文人や僧侶たちに強い影響を与えた筆跡(『風信帖』など)も、この地で生まれている。木々の間を吹き抜ける風のなかに、今なお空海の熱き情熱が残響として漂っているかのような錯覚すら覚える。