ハートがここまで多彩なパレットを持つに至った背景には、通信テクノロジーの進化と表現欲求のせめぎ合いがある。発端は1999年、ドコモの栗田穣崇氏らが開発したわずか12×12ピクセルの絵文字セットだった。当初はシンプルな記号に過ぎなかったハートだが、日本独自の文化から世界共通言語へと急速に拡大していく。
文字コードの標準化を担うユニコードコンソーシアムがUnicode Emojiとして絵文字を規格化し、AppleがiPhoneに本格的なカラー絵文字を組み込んだことで、記号の使われ方は一変した。単なる「好き」や「感謝」の記号から、微細なニュアンスを使い分けるためのカラーバリエーションへと拡張されていったのだ。現在では淡い中間色や無彩色まで揃い、言葉にできない感情のグラデーションを誰もが指先一つで表現できる環境が整っている。