「100万ドル」という数字の根拠を巡っては、今も多くの好奇心が寄せられる。1950年代当時、神戸の六甲山から見下ろす約495万球の電球使用料を、1ドル=360円の固定相場で換算した結果「1日あたり約100万ドル」になったという説が有名だ。しかし、現代のエネルギー事情にあてはめると、その様相は大きく異なる。
全国の自治体や施設で街路灯やオフィス照明のLED化が急速に進んだことで、夜景を構成する光の「物理的な電力コスト」は大幅に削減されている。それにもかかわらず、夜景の輝きそのものは衰えるどころか、むしろ洗練度を増している。
日本全国の夜景資源を調査・認定する一般社団法人夜景観光コンベンション・ビューローの関係者はこう語る。「現代の夜景の価値は、電力をどれだけ消費したかではなく、光の色温度や配光制御がいかに都市デザインと調和しているかで決まる。省エネ技術の向上によって余計な光害が抑えられ、際立たせるべき建築や街並みが美しく浮かび上がるようになった」
つまり、現代の「100万ドル」とは電気代の額面ではなく、緻密に計算された照明設計と環境技術が生み出す「景観価値の総額」と解釈するのが極めて自然だ。