「1万円台で買える革靴の中で、もっとも仕立てが綺麗」と評される一方で、購入初期に足を痛めるユーザーが後を絶ちません。この二面性が生まれる最大の理由は、アッパー(甲革)に採用されているガラスレザー(コレクテッドグレインレザー)の物理的特性と、靴底を接着剤で圧着するセメンテッド製法の組み合わせにあります。
ガラスレザーは革の表面を平滑に削り、樹脂塗料でコーティングを施した素材です。水濡れに強く、ブラッシングと水拭きだけで上品な光沢を維持できる反面、履き始めはどうしても樹脂層特有のハリと硬さが残ります。さらに、足をホールドするシューレース(靴紐)がないケンフォードのコインローファーは、歩行時の屈曲負荷がかかとに集中しやすく、これが「革が硬くて痛い」「かかとの靴擦れで泣いた」という悪評の根源となっています。
ただし、現場の靴職人や販売員への取材によれば、この初期の硬さはおよそ2週間から1ヶ月程度の実着(10回前後の着用)で解消されるケースが大半です。履き込むにつれて屈曲部分にクッキリとしたシワが入り、インソールと内部クッションが自身の足裏形状に沈み込むことで、スニーカーに近い安定した歩行感へと変化していきます。つまり、「痛い」という声の正体は革靴特有のエイジングプロセスを知らずに履き下ろしてしまったことによる初期ギャップと言えます。