ロンドン郊外、ヒースロー空港から車で北へ走ると、深い緑に囲まれたウェクサムの街が現れる。その一角に佇むレンガ造りの建物こそが、かつての学び舎だ。
1989年の開校以来、ここは日本国内と同等の高校卒業資格を得ながら英国の文化に触れられる稀有な場所だった。広大な敷地、歴史を感じさせる寄宿舎、そして芝生のグラウンド。日本が経済的に最も輝いていた時代、親たちはこぞって子どもたちをこの「英国の日本」へと送り出した。
だが、時代の変化は容赦がなかった。2020年代に入り、渡航制限や急激な円安が直撃する。維持費の負担は膨らみ、生徒数は減少の一途をたどった。結果として、かつての憧れの地はひっそりとその役割を終えることとなった。