『キングダム』屈指のクライマックスである合従軍編において、麃公の壮絶な戦死が描かれるのは単行本第30巻(第325話「不抜」〜第326話「信の手」)です。
函谷関の防衛戦が膠着する中、天才軍師・李牧(りぼく)が極秘裏に南道を通って秦国の王都・咸陽へと奇襲を仕掛けるルートを選択。この絶望的な奇襲を唯一察知して追撃を仕掛けたのが麃公でした。李牧が張り巡らせた絶対の迎撃陣「流動」の渦を本能のみで見破り、李牧の眼前数メートルまで肉薄した麃公の前に立ち塞がったのが、三大天の武神・龐煖でした。
麃公と龐煖の一騎打ちは、力と力の真っ向勝負となりました。麃公は龐煖の圧倒的な膂力によって片腕をへし折られ、致命傷を負いながらも一切の怯みを見せず、残った片腕の力だけで龐煖の左腕をへし折るという驚異的な執念を見せつけます。
救出に駆けつけようとする信を制止し、退却を命じる麃公。その今際の際に放たれた「前進じゃァ」「童 信! 火を絶やすでないぞォ」という咆哮とともに、自らの愛用していた「大盾」を信へと託しました。信が涙を呑んで馬首を返した直後、麃公は龐煖の矛に貫かれ、波乱に満ちた生涯に幕を下ろしたのです。このシーンは、単行本第31巻や第32巻の回想・エピローグに至るまで、読者の涙腺を激しく揺さぶり続けました。