方広寺の境内は「静寂の聖域」と呼ぶにふさわしい見どころに満ちています。参拝時に必ず足を止めて鑑賞すべき主要スポットを解説します。
1. 森の息吹に溶け込む「五百羅漢」の石仏群
総門から本堂へと至る山肌や参道沿い、そして本堂裏手の「らかんの庭」には、無数の石仏が穏やかな表情で並んでいます。これらは全国の信徒によって寄進された五百羅漢です。よく観察すると、笑みを浮かべる者、瞑想に沈む者、談笑する者など表情は千差万別であり、「自分や亡き肉親に似た顔が必ず一つは見つかる」と言い伝えられています。苔に覆われた石仏と木漏れ日のコントラストは、見る者の心を深く癒やします。
2. 東海屈指のスケールを誇る「大本堂」と山岡鉄舟の扁額
明治38年から大正7年にかけて建立された本堂は、間口32メートル・奥行き27メートルに及ぶ壮大な木造建築です。本堂正面に掲げられた巨大な扁額「深奥山」は、幕末三舟の一人として名高い山岡鉄舟居士の揮毫によるもの。堂内に入ると広大な畳敷きの大空間が広がり、本尊である釈迦如来坐像が静かに鎮座しています。
3. 国指定重要文化財「七尊菩薩堂」と三重塔
境内奥の山腹に佇む「七尊菩薩堂(しちそんぼさつどう)」は、1401年(応永8年)頃の建立と推定される方広寺最古の建造物であり、国の重要文化財に指定されています。簡素ながらも室町初期の禅宗様建築の粋を極めた貴重な遺構です。また、境内の高台にそびえる朱塗りの三重塔(登録有形文化財)は、豊かな緑の中でひときわ鮮烈な存在感を放っています。