当時の大衆の反応と、20年近い歳月を経た現在の受け止め方には、劇的なパラダイムシフトが見られます。当時のインターネット掲示板(2ちゃんねる等)やワイドショーのコメント欄は、文字通りの罵詈雑言で埋め尽くされていました。
「国民的女優を裏切った最低の夫」「伝統ある歌舞伎の看板に泥を塗った」という批判が9割以上を占め、中村獅童の俳優生命は完全に終わったと見なされていたのが当時の偽らざる空気感です。特に、謝罪会見後も夜遊びをやめられなかった姿勢に対しては、「反省の色が全くない」と激しい拒絶反応が示されました。
ところが、舞台現場での徹底した下積み復帰と、その後の活動姿勢が少しずつ潮目を変えていきます。歌舞伎座の舞台で脇役から泥臭くやり直す姿、そして2015年に再婚した妻・沙織さんとの慎ましく誠実な家庭生活がメディアで伝えられるにつれ、世間の見方は軟化していきました。
現代のSNS(XやInstagram)におけるファンの声を見渡すと、「あの不祥事は弁解の余地がないが、その後の生き方で信頼を取り戻した」「過ちを隠さずに背負い続け、芸に昇華させた稀有な役者」といった、罪を認めた上での人間的再起を評価する声が主流を占めています。過去を消し去るのではなく、十字架として背負いながら芸を磨き続けた姿勢が、厳しい現代のオーディエンスにも浸透していったことが窺えます。