ネット上には「口角ボトックスを打てば誰でもキュッと口角が上がる」という甘い宣伝文句が溢れているが、これは解剖学的に見て明らかなミスリードだ。施術を検討するにあたり、避けて通れない口角ボトックスデメリットと失敗のからくりを正しく理解しなければならない。
最大のリスク要因は、口角下制筋の内側に隣接する下唇下制筋(かしんかせいきん)への薬剤漏出(オーバーディフュージョン)である。下唇下制筋は、言葉を発したり笑ったりするときに下唇を下方へ引き下げる極めて重要な筋肉だ。医師の触診技術が未熟で注入ポイントがわずか数ミリ内側にずれたり、薬液が周囲へ拡散しやすい高容量を打ち込んだりすると、この下唇下制筋まで麻痺してしまう。
結果として生じるのが、典型的な口角下制筋ボトックス失敗例である「口元の非対称」と「会話・咀嚼機能の低下」だ。笑ったときに麻痺した側の下唇が下がらず、前歯が不自然に隠れて口が歪む。さらに、ボトックス製剤は一度注入してしまえば、薬効が切れるまでの数ヶ月間、完全に中和する特効薬は存在しない。「手軽なプチ整形」という甘言の裏には、顔面の機能解剖学をミリ単位で熟知した医師にしか扱えないという、高度な技術的障壁が横たわっている。