結論から整理すると、現代の小児医学において「夜尿症がある子どもの知能指数(IQ)が統計的に有意に高い」と証明する直接的なエビデンスは存在しません。しかし、なぜこれほどまでに「夜尿症の子は頭がいい」「天才肌でおねしょが抜けない」という言説が広まり、今なお支持を集めているのでしょうか。
その最大の鍵は、「脳の発達速度のアンバランスさ」と「睡眠の深さ」にあります。知的好奇心が旺盛で言語能力や観察眼が極めて発達している子どもは、起きている間に目や耳から膨大な情報を取り込み、大脳皮質をフル回転させています。こうした子どもは、昼間に酷使した脳を休息・修復させるため、夜間に入ると極めて深いノンレム睡眠(徐波睡眠)に沈み込む傾向が顕著です。
通常であれば、睡眠中に膀胱が尿で満杯になると、その刺激が脳幹や視床下部を経由して大脳に伝わり、「起きなさい」という覚醒シグナルを送ります。ところが、日中の脳活動が活発で睡眠圧が強すぎる子どもの場合、尿意のシグナルが大脳の覚醒中枢を刺激できず、そのまま就寝中に排尿へと至ってしまいます。つまり、「深く熟睡できるほど昼間に脳を使い倒している」という生態が、結果として「賢い子におねしょが多い」という観察経験として語り継がれてきた側面があります。
さらに心理学的な視点を加えれば、昔の親や祖父母が、おねしょに落ち込む子どもを励まし、保護者のイライラを鎮めるための「愛ある生活の知恵(ポジティブな解釈)」として定着させた文化的な側面も見逃せません。